ディズニーランドへ。





「あの猫、名前とかついてるんですか?」
「クロ。大体今暑いから一緒に寝てる。そばで。もう11年目かな。
「初めて会ったときのこと覚えてますか?
「うん、3匹真っ黒いのが来たんだよ。3匹。
 気持ち悪いよね、黒ばっかり
 目だけギラギラしてさあ。
 なんであんた、黒猫はいいんだ縁起がっていうけど、
 気持ち悪いんだよ目ぎらぎらさして。
 目ん玉、夜になるとぎらぎらぎらぎらしてさあ、
 いやだなあ〜気持ち悪いなあ〜思ってたらさ。
 猫好きで餌あげてるおばちゃんがさ、違うんだよ幸運なんだよって。
 黒猫はって。」

「学生結婚だから、俺。
 3月に卒業するじゃん?5月に産まれたの。
 だからおっかんは苦労したろう。」
「今お子さんは?」
「八王子にいるよ。会えねえけどな。
 おれがスケベだから、他の女とばっかりやってたから。
 苦労かけたらいかんから、
 上の子が10歳で、下の子が8歳のとき別れたの。」
 でも、中学校のときにこっち来て、
 なんだっけあれ、あれ、あれさ、
 ディズニーランド!
 あそこに連れてってやったの。
 でもおっかんにはさ、会わないでよ。
 結婚できる人だったからね、綺麗な人だったからね。
 だから俺みたいのがいたらだめだって言って、
 子供だけは連れて行ったの。ディズニーランドへ。」



(8/10/2013 日比谷)



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